上野硝子工業株式会社様は明治16年(1883年)創業、建材(ガラス)業界の老舗企業です。140年以上の歴史を誇る同社が目下、全社を挙げて取り組んでいるのは「G-PAT」と名付けられたデジタル変革プロジェクト。
リトルソフトは同プロジェクトにおいて、納期管理システムの開発に参画し、煩雑だった納期管理のシステム化をサポートさせていただきました。
今回は、同社がシステム化を決定した背景や業界の課題、開発企業・システム選定のポイント、導入成果や今後の展望について、事業管理部DX戦略室の今村様にお話をうかがいます。
インタビューのポイント
- ・電話、FAX中心のアナログ業務が生む納期管理業務の非効率が課題
- ・「閲覧制限機能」と「丁寧なコンサルティング」を軸に開発企業を選定
- ・納期管理のシステム化によりタイムラグのない情報共有を実現
- ・今後はモバイル対応や掲示板機能を拡充し、業界DXの牽引役を目指す
市場規模拡大に期待がかかるも…建材業界・ガラス業界が抱える今後の課題とは
<首都圏で進む大規模な都市再開発や、環境配慮・省エネ対応への意識の高まりを背景に、建築業界にも新たな需要が生まれつつあります。しかし、明るい話題ばかりではありません。建築業界には早急に解決しなければならない課題があるからです。>
--建材業界が抱えている課題には「人材不足」「輸送・原材料価格の高騰」「デジタル化の遅れ」などが挙げられますが、この中でもデジタル化の遅れによる納期管理業務の煩雑さは深刻です。ガラスを中心とする建材をハウスメーカーや工務店、ゼネコンに販売する当社も例外ではありません。
当社が取り扱っているガラスの多くは完全受注生産品であるため、発注から搬入までの間に納期変更が頻繁に起こります。そのたびにメーカーや運送会社など複数の取引先に連絡・調整が必要となりますが、その際のやり取りは電話・メール・FAXといったアナログな方法が多く、とても非効率的だと感じていました。--
納期管理の業務改善から始まる建材業界のDX
<建材業界は流通が多層化しているため関わる企業が多く、連絡手段も”先方次第”になる傾向があります。その結果、非効率が積み重なり、それがさまざまな問題を引き起こす温床となっていました。>
--そうこうしているうちに、「タイムリーな情報共有ができない」「水掛け論になる」「そうした問題を改善したいけどデータが残らないので分析が難しい」など、色々な課題山積みになってしまったため、今回はDXを進めるための第一歩として、納期管理のシステム化を決定しました。
どの業界であっても、納期管理は取引の信頼性を担保する重要な業務です。だからこそ、これからは納期の情報を正確に、スピーディーに先方へ伝える努力が必要であり、これが将来の継続的な取引や業界の発展につながるのだと、私たちは考えました。--
DX成功のために重視したのは閲覧制限機能と伴走支援
<期待と不安の中で進める納期管理のシステム化計画。開発企業を選ぶにあたり、重視したポイントは大きく2つでした。>
--選定の決め手となったのは、「閲覧制限機能」と「丁寧なコンサルティング」の2点です。
先ほども触れたとおり、ガラスの搬入には多くの関係者が関わるため、情報を「相互に確認すべきもの」と「特定の関係者だけに共有すべきもの」に分ける必要があります。そのため、自由に閲覧制限を設定できる機能は、今回特に重視していたポイントの一つでした。
また、当社は今回のようなシステム化が初めてだったため、一緒に色々と時間をかけて考えていただけることも重要です。その点、導入決定前の段階で数ヶ月にわたり業務の全体像の洗い出しや、それにあったシステムの提案などを繰り返し検討していただき、当社でも気づかなかった問題や解決策を見つけていただいたので、リトルソフトさんは信頼できると感じました。--
DX推進サービス導入の効果〜タイムラグのない情報共有で業務効率化に成功〜
<DXに向けた第一歩として開発された納期管理システム。その効果は社内だけでなく、取引先や現場からも高く評価され、結果的に“三方よし”と言える成果を生み出しました。>
--これまで納期に関する情報は基幹システムで管理されていましたが、アクセスできるのは限られた社員だけでした。そのため、情報をもとにお客様へサービスできるのは一部の人に限られ、関係者全員で共有することができませんでした。
その点、納期管理システムを導入してからは関係者が必要なデータにすぐアクセスできるようになり、現場からも「便利になった」と好評です。当初の狙い通り、相互に確認できる仕組みが整ったことで、取引先の配送会社からも「情報を迅速に確認できて仕事がしやすくなった」との評価をいただいています。
やはり関係者同士がタイムラグなく情報を確認できるようになると、業務全体の効率が上がりますね。システムを導入して本当によかったです。
導入後に出てきた課題もすでに改修を終え、今は本格導入という形で各関係者へ浸透を進めている段階です。近い将来には、さらに情報の流れが一本化されていくのではないかと期待しています。--
次の目標はスマホと掲示板を活用するDX「システム化できる領域を増やしたい」
<システム導入の成果を踏まえ、今後はどのようにDXを広げていくのでしょうか。伝統を守りつつ革新を進める同社が描く次の一手とは?>
--今後の展望としては、DXをさらに推進するべく、まずはモバイル対応や掲示板機能を取り入れたいと考えています。現在のシステムはパソコンやタブレットでの利用が中心ですが、現場ではスマホの方が使いやすい場面も多いため、現場向けにしっかりとモバイル版を作り込みたいですね。
また、掲示板についてはメーカーからのお知らせを共有する場として活用したいと思っています。お客様とお話ししていると、メーカーからの最新情報がうまく伝わっていないケースが多いのです。そこで「この製品は納期が遅れています」「この製品は〇月頃に納品可能です」といった情報を掲示板に載せて、関係者全員に行き渡るようにしたいと考えています。
今回は納期管理システムを導入しましたが、今後はさらにシステム化の範囲を広げ、業務全体をもっと効率よく進められるようにしていきたいです。建材業界・ガラス業界にはまだアナログな部分が多く残っていますので、上野硝子工業がそのDXをけん引できる存在になれればと思っています。そのためにも、リトルソフトさんにはこれからもお力添えをお願いしたいですね。--